亀山市で防災の啓蒙活動を行っている市民グループ「かめやま防災ネットワーク」は平成27年3月26日、同市みどり町にある学童保育所「くれよんくらぶ」で、小学生約50人を対象に防災について学ぶ出前講座を開いた。講座では、防災に関するクイズや、災害時に役立つ新聞紙を使ったスリッパ作り、車いすの試乗などが行われ、子どもたちは同ネットワークのメンバーと一緒にさまざまなプログラムを体験し、防災について学習した。

出前講座で防災について学ぶ小学生

出前講座で防災について学ぶ小学生

4名の会員が子どもたちと交流

今回の出前講座は、この学童保育所と隣接してある井田川小学校のクラブ活動で、同ネットワークが「こども防災士」を育成する取り組みや、他の学童保育所で防災教育を実施してきたことがきっかけとなり、依頼を受けて企画された。同ネットワークからは、会長の清水勇さんをはじめ4名の会員が講師として参加。元気な子どもたちであふれる学童保育所の教室のなか、清水さんが「いろいろ楽しいことをしながら防災について勉強していきましょう」と笑顔で呼びかけて、午前10時より始まった。

最初に行われたのは、防災に関するクイズ。一つ目の「ぐらっと揺れたらどうしよう?」の問題がだされると、「机の下にもぐる」、「ダンゴムシ」、「すぐに逃げる」など、元気な声で答えが次々と返ってくる。ダンゴムシとは、地震が発生した際に身をかがめて頭を手でおおい、体を守る体勢をとること。清水さんが、①姿勢を低くして、②頭と体を守って、③揺れが収まるまでじっとしている、と解答を明かして「みんなでやってみよう」と呼びかけると、子どもたちは一斉にダンゴムシの体勢に。この他にも「町のなかで地震にあったらどうするか?」、「教室でぐらっときたら?」などのクイズが出題され、清水さんは子どもたちと一緒に考えながら答えを導きだした。

「教室から避難する時に気をつけることは?」との問題では、答えの「お(押さない)・は(走らない)・し(しゃべらない)・も(戻らない)・さ(さわがない)」について、清水さんがわかりやすく解説。地震が発生した時の家庭内での非常持ち出し品や避難場所、連絡方法などにも触れて、家族で話し合っておくことの大切さを説いた。

かめやま防災ネットワークの会員4名が講師を務めた

かめやま防災ネットワークの会員4名が講師を務めた

○と×のついた団扇を手にしてクイズに答える子どもたち

○と×のついた団扇を手にしてクイズに答える子どもたち

同ネットワーク会長の清水勇さん

同ネットワーク会長の清水勇さん

災害時の危険を体験

クイズが終わると、今度は教室いっぱいにブルーシートが敷かれる。シートの上に運ばれてきたのは、たくさんの卵の殻が入った段ボールの箱と、緑の人工芝のマット。これからいったい何が行われるのか、子どもたちは興味津々の様子で目を輝かせる。「卵の殻と人工芝を使い、裸足になって物を踏むのがどれくらい危険なのかを体験してもらいます」。学童保育所の指導員・佐野雄一郎さんが説明すると、教室は驚きの声で充満した。

靴下を脱いだ子どもたちが、順番に卵の殻を踏み始める。けっして怪我をするような硬さではないが、それでも「痛い」という歓声と悲鳴があちこちから聞こえてくる。「けっこう痛いですね」。佐野さんら大人の指導員も体験し、感想を伝える。卵の殻を踏み終わった子どもは、素足のまま人工芝も踏みしめ、その感触をみんなで確かめ合った。「卵の殻でもこれだけ痛かった。これがもしガラスや尖った石だったら怪我をする。地震が発生した時に靴を履いていないと危ない」。佐野さんは教室にいる全員に向かって、ゆっくりと語りかけた。

災害時に裸足で歩くことは危険であると理解したうえで、次に行われたのが、身近にある新聞紙を使ったスリッパ作り。夜間に地震が発生し、家のなかでガラスなどが割れると、その場から動けなくなってしまう。災害時に家族や友達を守るため、自分たちで考えて行動できる取り組みの一つが、このスリッパ作りであると、同ネットワークの会員が説明する。

新聞紙を受け取った子どもたちは、講師から作り方を教えてもらい、どんどん折り進めていく。作り終えた男の子や女の子は、まだ折っている最中の友達にアドバイスを送り、次々と紙のスリッパを完成させていった。「家でも作ってみて。お父さんやお母さんにも教えてあげてほしい」と佐野さん。手作りのスリッパに足を入れた子どもたちは、うれしそうな表情を浮かべて教室のなかを歩いたり、滑ったりして履き心地を体感。人工芝のマットも踏んで、裸足との感触の違いを確かめた。

 教室のなかにブルーシートが敷かれ、卵の殻と人工芝のマットが用意された


教室のなかにブルーシートが敷かれ、卵の殻と人工芝のマットが用意された

卵の殻と人工芝を裸足で踏んで、感触を確かめる子どもたち

卵の殻と人工芝を裸足で踏んで、感触を確かめる子どもたち

大人たちのサポートを受けて新聞紙を折り重ねてスリッパを作る

大人たちのサポートを受けて新聞紙を折り重ねてスリッパを作る

できあがったスリッパを履いて人工芝を踏み、裸足で踏んだ時との感触の違いを確認した

できあがったスリッパを履いて人工芝を踏み、裸足で踏んだ時との感触の違いを確認した

楽しみながら学ぶ

続いて教室に運ばれてきたのは、四隅に車輪がついた丈夫な木製の板。地震の揺れがどのようなものか、この動く板の上に乗って体感できるよう同ネットワークが製作したもので、防災教育で使っている。板が動かないよう、2人の講師が左右から両手で押さえ、指導員らがそばで見守るなか、説明を受けた子どもたちが、順番に2人ずつ板の上に乗って体を預ける。一人は立って、一人は座り、両脇についた大人が静かに板を滑らせてゆっくりと反復させる。どの子どももしっかりと姿勢を保とうとするが、揺すられるたびに上半身がふらついてしまう。揺れる板の上で驚きの表情を浮かべていた女の子は、「とても楽しかった」と体験後に笑顔で振り返った。

出前授業の最後に行われたのは、車いすを扱う体験。折り畳み式の車いすを使って、同ネットワークの会員が子どもたちにブレーキやステップの操作法、段差があるときの乗り越え方などを教える。一通り見て学んだ後は、乗る人と押す人に分かれ、教室のなかで実際に動かしてみる。講師や指導員が見守るなか、初めて車いすに触れた子どもたちは、教室のなかをゆっくりと移動しながら、操作の手順や方法を身につけた。その後は、教室から屋外に出て、建物入口の傾斜があるスロープやでこぼこした運動場で車いすを動かし、さまざまな場面での扱い方を全員で学んだ。

小学生がいろんな体験を通して、楽しみながら防災について学んだ出前授業。運動場で整列した子どもたちを前に、「今日学んだことを地震があったときに活かせるよう、しっかり覚えておいてください」と佐野さんが話す。講師を務めた同ネットワークの会員たちに「ありがとうございました」と全員で挨拶し、この日の防災教育は正午に終了した。

講師の話に耳を傾ける小学生

講師の話に耳を傾ける小学生

地震がどのような揺れ方をするのか、動く板の上に乗って体験した

地震がどのような揺れ方をするのか、動く板の上に乗って体験した

車いすの扱い方について学習する子どもたち

車いすの扱い方について学習する子どもたち

運動場で乗ったり押したりして交代で車いすを体験した

運動場で乗ったり押したりして交代で車いすを体験した

出前講座に力を入れる

防災や減災の啓蒙普及、まちづくりの推進を目的に、有志によって平成20年に設立された同ネットワーク。現在は、三重大学と県が認定する、みえ防災コーディネーターの資格をもつ17名の会員で活動を継続しており、防災に関する出前講座の開催や同市が実施する総合防災訓練時の支援、市内にある自主防災倉庫の資機材の点検などを行っている。こうした活動が評価を受けて、平成24年には、各地で自主的な防災活動に取り組む団体を県が表彰する「みえ防災大賞」を受賞した。

この日の出前講座で講師を務めたのは、会長の清水さん、副会長の渡邉大さん、近藤保行さん、松隈潤治さん。小学生を相手にした防災教育について、清水さんは「子どもたちに上から目線で接してはいけない。同じレベルで一緒に共感することが大切。この活動のモットーは『遊んで学ぶ』ことなんです」と語った。同ネットワークでは、特に力を入れている市民を対象にした出前講座について、要望があればいつでもどこでも開いて、一人ひとりの防災意識の向上につなげていきたいとしている。

出前講座で講師を務めた同ネットワークの副会長・渡邉大さん、会長・清水勇さん、松隈潤治さん、近藤保行さん(左から)

出前講座で講師を務めた同ネットワークの副会長・渡邉大さん、会長・清水勇さん、松隈潤治さん、近藤保行さん(左から)

タイトル 亀山市の市民グループが学童保育所で防災教育
概要 亀山市で防災の啓蒙活動を行っている市民グループ「かめやま防災ネットワーク」は3月26日、同市みどり町にある学童保育所「くれよんくらぶ」で、小学生約50人を対象に防災について学ぶ出前講座を開いた。講座では、防災に関するクイズや、災害時に役立つ新聞紙を使ったスリッパ作り、車いすの試乗などが行われ、子どもたちは同ネットワークのメンバーと一緒にさまざまなプログラムを体験し、防災について学習した。
タイトル2 カメヤマシノシミングループガガクドウホイクジョデボウサイキョウイク
概要2
公開レベル 公開
出典 みえ防災・減災センター
提供者 三重県・三重大学 みえ防災・減災センター
提供者公開フラグ 公開
原本の保管場所
コンテンツの取得日時 2015年 03月 26日
コンテンツの住所 三重県亀山市みどり町53-1
コンテンツの撮影場所
タグID 学童防災士,かめやま防災ネットワーク,亀山市
コンテンツID 地域の取り組み

コンテンツに関する詳細情報