台風接近と選挙の投票日が重なることが予測されていたため、伊勢市は明るいうちからの対応を心がけた。しかし、市中心部の幹線道路が冠水し、街中での移動が困難になるという事態が起こった。

10月22日の日曜日に朝から降っていたがそれほど大きな雨ではなかったが、次第に雨量が増えて行って夜半にはもの凄い雨が降ったという印象です。

問い:これは何時もの雨とは違うぞ!と感じたのは何時ぐらいで、どんな雨だったでしょうか?

気象台とのやり取りでおおよその予想はついていたのですが、7時8時ぐらいになるとこれは何時もの雨ではないと感じました。

問い:時間雨量でどれぐらいだったか分かりますか?

時間雨量は60mmから多い時は80mmというバケツをひっくり返したような雨と記憶しています。

問い:その当時、日置さんはどこで何をされていましたか?

伊勢市では防災センターに災害対策本部を設置していまして、私はそちらにつめていました。

問い:防災センターにつめていた訳ですが、時間雨量80mmという雨はどの様に感じていましたか?

防災センターの4階が災害対策本部なのですが、屋上にあたる雨の音、窓にあたる雨の音が今まで聞いたことがないすごい音がして、これは大きな被害が出るかも?と感じたところです。

問い:具体的に防災センターの中、外でどの様な対応、対策が取られていたのですか?

外ではパトロールを強化し、どの辺りで冠水しているのか?倒木がないか?などの対応をしていました。センター内では、市町の指示のもとできるだけ早い対応、特に明るい間にできる事はしておきなさい、という指示がありましたので避難所の開設などを明るいうちに準備しました。

問い:パトロールの現場からの状況が入って来たと思いますが、伊勢市内でどこでどんな被害があったか具体的に教えて下さい。

伊勢市内で早くに分かって来たのは勢田川の水量が上がってきていまして、さらに激しい雨による冠水が各所で始まってきた上に勢田川の越水が予想される状態が夜には分かったきた状況でした。

問い:勢田川の越水、水位の上昇によってどの様な事が起こりましたか?

宇治山田駅の裏に勢田川が流れていまして、宇治山田駅も膝ぐらいの高さまで冠水しまして、メインストリートの八軒道路も冠水してきたという状況でした。

問い:具体的にどれぐらいの範囲でという事を教えて下さい。

どれぐらいの範囲という事を数値で示せないのですが、伊勢市で最も住まいの多い地域で冠水しました、かつメイン道路が冠水したために縦横に横切る事が出来ないので人の行き来が困難になった気がします。

問い:先ほど時間雨量で60mmから80mmと聞きましたが、総雨量としてはどれほどでしたか?

最大降った48時間という区切りで539mmという雨が降っていまして、過去最大が400mmですので、過去最大の1.35倍の雨が降ったという事になります。

問い:人的被害や家屋の被害はどうでしたか?

汁谷川という中小河川の付近の住宅では人の背丈ほどの浸水になったようです。そこは少し谷のようになっていてポンプにより排水していたのですが、ポンプの能力を越えてしまいまして、排水機の配電盤が浸水してしまいポンプが止まってしまい被害が大きくなったと考えられます。そして、本当に残念な事ですが、お一人の方が亡くなられています。おそらく、どこまでが道でどこまでが水路なのか分からなかったのではないか、というふうに思っています。

問い:土砂崩れ等々はいかがでしたか?

高速道路の周辺に住宅地がありまして、その住宅地に向けて法面が崩落した場所がありました。人的被害や家屋への流入などはありませんでしたが、ここで大きな被害が出てネクスコさんに対処してもらいました。

問い:次々と被害の状況が入ってくる中で市としては、避難誘導等を含めてどの様な対応を取られましたか?

市長の号令のもと早め、早めの対応をしていましたが、夜になると避難する事自体が大丈夫なのか?要は膝まで浸かって避難するよりも、例えば2階へ垂直避難してもらった方が良いのではないか?という思いがありましたが、とにかくは避難勧告を広い範囲で出して、さらに追加して避難指示も併せて出していったという事になります。

問い:避難勧告や避難指示を出された時間帯ですとか地域について教えて下さい。

避難勧告は最初細かい地域で出していましたが、その後10月22日 18時55分に市内全域に避難勧告を出しました。伊勢市全域に避難勧告を出すのはおそらく初めての事になります。その後、順次水位が上がってくる状況に応じて避難指示を出させて頂いたという状況です。

問い:日置さんから見て避難の状況はスムーズに進んでいたと感じられましたか?

正直、高台にある防災センターで実際にどういう風にどこまで避難されているか見えない状態の中で勧告や指示を出していたので不安でした。結果的に避難された人は1200人ほどで全人口の1%にあたります。市内全域に避難勧告を出したので、その1%が少ないという見方もありますが、そこは無理に避難せず2階に避難した方々も避難者として、これは今後講演会などを通して検証をして行く部分だと考えています。

問い:今振り返ってあの時こうしておけば良かったという点はありますか?

目の前で災害が見えていない状態で被害が進んでいると実感できる方法を考えていきたい。例えば、ホワイトバードに情報を書いていくのですが、例えば通行止めなどについては共有が出来るようにマイクを持って「ココが冠水しました」「ココが冠水しました」としていくと他のチームの者もこの対策をしなければと意識も高まってくると思います。この辺りを進めて行って、いわゆる災害に対するテンションを高めていく対応が今後出来て行けばと考えています。

問い:今回の台風で市内全域の冠水がインパクトが大きかったと思いますが、ライフライン等はいかがでしたか?

ライフラインについては、停電も数千戸とあったのですが、中部電力さんの頑張りで思いのほか早く回復してもらいました。上下水道については、いろいろな施設での被害はありましたが、一般家庭での断水だとか上下水道が使えないなどの被害は一時で長くはありませんでした。

問い:道路の冠水もありましたが、家屋の床上浸水や床下浸水の被害はどうでしたか?

床上浸水については、400件を越える浸水になりました。床下と店舗を合わせると1850件程度の被害が出ました。

問い:この数字はどのように受け止めていますか?

昭和19年に伊勢市では七夕豪雨が記憶に残っている豪雨でして、くしくも同じく選挙の日であって非常に大きな被害が出ました。その時の被害は一万三千戸で被害が出ていまして、今回1800戸という被害でありながらも今の時代において1800戸というのは非常に大きな被害と考えています。

問い:今回の平成29年第21号台風を経験された中で日置さん個人として災害に対する意識が変わったり日頃から準備されている事がありましたら最後に教えて下さい。

私共としては津波避難タワーですとか防災センターなどハードとして立ち上げて来ましたが、今回の災害で感じた事は皆さんがご自身のお住まいの地域のリスクをぜひ知って頂きたい、と思いました。ですので、そこまで冠水しているのに逃げるのであれば2階に逃げよう!ですとか、ここは2階以上にくる想定はない、などの事を知っていれば非常に危険な事にならない、という事になります。これから正しい避難の仕方を地域に入って皆さんにしっかり啓発していく中で一緒に災害から身を守るという事を学んでいきたいと強く感じました。

問い:災害時、何が一番重要だと改めて思いますか?

正確な情報をいかに取って、元々正確な判断を身に付けておくこれがすごく大事だと考えています。

タイトル 平成29年台風第21号体験談映像(伊勢市 日置 和宏)
概要 台風接近と選挙の投票日が重なることが予測されていたため、伊勢市は明るいうちからの対応を心がけた。しかし、市中心部の幹線道路が冠水し、街中での移動が困難になるという事態が起こった。
タイトル2 ヘイセイ29ネンタイフウダイ21ゴウタイケンダンエイゾウ(イセシ ヒオキ カズヒロ)
概要2 お名前:日置 和宏
ご住所:伊勢市
発生時にいた場所:伊勢市役所
当時の年齢:
公開レベル 公開
出典 みえ防災・減災センター
提供者 三重県・三重大学 みえ防災・減災センター
提供者公開フラグ 公開
原本の保管場所
コンテンツの取得日時 2018年 02月 01日
コンテンツの住所 三重県伊勢市岩渕
コンテンツの撮影場所 三重県伊勢市岩渕
タグID 伊勢市,平成29年(2017年)台風第21号
コンテンツID 平成29年台風第21号体験談

動画に関する詳細情報