昭和東南海地震の記憶を体験して思いつくままに当時の記憶を書きます。当時東富田地区は大正時代明治の末期の建物が多く草葺きの住宅もありました。建築基準法も旧法で、あまり合法的に家を建てる人も無く、土地の大工棟梁にお任せだったように思われます。
さて小学校2年生の小生は腎臓が悪く休学をしておりましたので、昼食を終え1階座敷で休息しておりますと突然の大きな揺れに見舞われ地震です。当時私の家は風呂屋でした。家は木造2階風呂屋部分も含め50坪ぐらいの木造、大きな丸太梁・柱は4寸角でしたが、大変な揺れで父親が私を助けようとしますが僅かに10mぐらいの距離が歩くことが出来ません。揺れがひどく歩けません。暫くそのままにしておりますと、揺れが少し納まり外に小生を抱きかかえて避難しました。東富田特に小生の町内は道幅が狭く3mくらいであり、正面向の家も木造2階建てですから揺れで屋根がぶつかるのではないかと心配しましたと年寄の話でした。その年寄も明治30年頃の生まれの方が自身の経験のない大きな地震でありました。当時は戦争中でラジオ新聞等にて地震の記事は削除され、被害情報等は削除されたようです。津波も無く家屋の損害も火災も無く道路の損害も無く日常生活に戻りましたが、朝に夜に余震がひんぱんにあり、特に深夜になると必ずゆすりますので、避難の用意をして衣類を着たままで寝ました。又、デマが飛び刑事が張り込みにて聞き込み捜査に来ておりました。
次の20年1月の三河地震は深夜に起こりましたので先の地震で避難を経験していましたので避難は素早く出来ました。2回の地震で東富田地区は住宅建物の被害が無かった様に記憶しております。地震の避難場所は広場が無く砂浜に避難しましたが、津波の知識も無く今で思うと大変危険な場所だったと思われます。
小生、建築の仕事にして40年余りに成りますが、何時も思うのは大正時代の木造建築が耐震補強もあまりされていないのに地震被害が少なかった事です。当時の構造を説明しますと、家を建てる基礎の地均しをして突固めをして玉石又は敷石を置きます。その上に柱臍(ほぞ)を掘った土台を置き柱を建てます。梁を掛け屋根を作ります。基準法の筋違火打ち材等は施されていません。まして基礎コンクリートが無いので、アンカーボルト等は在りませんが地震に抵抗するのは真壁下地を止める貫材ではないかと思われます。管柱を貫通させ楔打ちにて柱を止めます。土台から梁まで4通り施工され、各柱全体にて水平力に抵抗するのでは無いかと思われます。其れに梁部材が大きいので柱との接地面積が大きく、仕口の仕事も丁寧に施工されていたのではないかと思われます。
屋根瓦は粘土土を沢山敷き瓦のなじみを良くします。しかも地盤は昔海岸で砂浜を埋め立てたところで少し掘りますと砂地になります。地耐力地盤N値は基準法の5以下ではなかったかと思われます。地震力に抵抗する部材が非常に少ないのに、又地盤が悪い処で住宅の被害がすくなかったことが今でも不思議に思います。
当時小学生なので情報範囲が狭かったので親又は大人の話をまとめますと次の様になります。地震による大きな被害は石原産業の煙突が途中から折れた事、後日会社に確認しますと高さ185m・直径14m・RC造で、当時は東洋一の煙突と皆が自慢しておりましたとの事。冨田漁港の岸壁のコンクリートが倒壊、岸壁の下が砂地で液状化によると考えます。地震のよる火災の発生なし。当時家庭用燃料はマキにて煮炊きをしておりましたが、昼食準備の後にて又倒壊家屋が無かったので火災の発生は無し。橋の落橋は無し。製網会社の木造工場が一部倒壊。小学校校舎の倒壊無し。翌年の三河地震も三河地方の様な被害は在りませんでした。津波は同じ三重県ですが尾鷲等南勢地方は発生したようですが、伊勢湾の中なので四日市地区は無かったようです。
以上当時の記憶に基づき書いて見ましたが、小生の記憶なので記憶の定かでない所もありますが記憶違い等ありましたら訂正願います。

タイトル 昭和19年東南海地震 体験手記(四日市市 廣瀬 了三)
概要 自宅座敷で昼食を終え休息していると、突然の大きな揺れに見舞われた。父親が私を助けようとするが、揺れがひどく僅か10mぐらいの距離が歩くことができない。
余震も頻繁にあり、夜も避難の用意をして衣類を着たまま寝た。
タイトル2 ショウワ19ネントウナンカイジシン タイケンシュキ(ヨッカイチシ ヒロセ ノリカズ)
概要2 お名前:廣瀬 了三
ご住所:四日市市
発生時にいた場所:自宅座敷
当時の年齢:7歳
公開レベル 公開
出典 みえ防災・減災センター
提供者 廣瀬 了三
提供者公開フラグ 公開
原本の保管場所
コンテンツの取得日時 2016年 04月 01日
コンテンツの住所 三重県四日市市東富田町
コンテンツの撮影場所
タグID 自宅,四日市市,昭和19年(1944) 東南海地震
コンテンツID 昭和東南海地震体験談・証言(手記)

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